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ジョブ型雇用の到来で大転職時代が来るのか

最近,転職も視野に入れたうえで就職活動をしている学生さんが多くなってきたように感じます.

これまで日本では主流とされてきた終身雇用制度が導入されてから約70年ほどたった現在,若年層の正社員が同一企業で働く割合は年々低下傾向にあり(1),一方で正社員の転職率は2016年以降最も高い水準に達したという報告もされています(2).

さらに,最近ではジョブ型雇用も注目されてきており,多くの学生さんが不安を感じながら就職活動をしているようです.

これから社会人となる学生さんのためにも,雇用制度の違いや,最近の雇用傾向等について教員としても考えていく必要があります.


そもそも終身雇用とは,企業が定年の年を迎えるまで正社員を雇用する制度のことです.新卒から定年まで雇用を約束することで従業員は安心して働くことができます.この制度は企業としていくつかの利点があります.

まずは,労働力の確保です.企業が終身雇用を採用することで従業員は心配することなく働くことができますので,労働力つまり人材を確保することができます.

次に,長期的な人事戦略が可能という点です.終身雇用を前提とした人事戦略を行うことができますので,従業員を時間をかけて教育することが可能となるだけでなく,配置転換や転勤など企業に必要な戦略をとることが可能となります.

一方で,従業員としても利点がありました.それは,雇用と収入の安定です.終身雇用では理由なくクビになる心配がありませんので,経済的にも精神的にも安心して仕事をすることができます.

これらは,終身雇用制度が導入された1950年ごろ,日本は高度経済成長期に入っていたということと,OJT(On the job training:先輩が後輩に対して知識やスキルを伝承する手法)を活かしたモノづくりを強みとする日本ならではの雇用制度であったといえます.

しかし,この終身雇用制度は現在転換期に来ているといえます.実際いくつかの企業では終身雇用制度が廃止されてきています.

この要因としては,やはり日本経済の低迷とそれに伴う人件費増が大きいと考えられます.

失われた30年といわれるように,現在日本経済は高度経済成長期と比べると縮小傾向にあります.当時,世界第2位の経済大国であった日本も,最近名目GDPがドイツに抜かれて4位となるなど,この低迷期の現在,年齢とともに増大する人件費は企業にとって大きな負担となってきます.

また,派遣社員の待遇改善や転職が珍しくなくなってきたこと,社員に求められる能力が変化してきたこと,成果主義が採用されてきたことなども要因として考えられます.


ジョブ型雇用とは,「特定のポストに空きが生じた際にその職務(ジョブ)・役割を遂行できる能力や資格のある人材を社外から獲得,あるいは社内で公募する雇用形態のこと」とされています(3).欧米の企業では主流となる雇用形態ですが,日本ではこれまであまり採用されてきませんでした.ちなみに日本では,多くの企業が採用後に職務を割り当てるメンバーシップ型雇用を採用してきました.

このジョブ型雇用の利点として,企業側にはスキルや能力のある人材をピンポイントで確保できる点があげられ,従業員としても,職務内容が明確なため自身のスキルや能力を十分に発揮することができますし,職務に応じた成果を得ることができます.まさに時代に沿った雇用制度といえます.

しかし欠点もあります.それは,雇用が流動的になることです.企業としても優秀な人材に転職されてしまうリスクが高まりますし,一方で,従業員としては失職の可能性も高まります.


ジョブ型雇用とメンバーシップ雇用のどちらがよいかはわかりませんが,このような背景から,学生さんも不安を感じながら就職活動をしているのかと思います.

そのため結局のところ,個人のスキルを高めることが安定した収入や安定した職につながるようです.

仮に日本も欧米に倣い,ジョブ型雇用が主流になり,日本人だけでなく外国からも多くの人が日本の企業で働くことになったとすると,どのような未来になるのでしょうか.

グローバルな世界において,日本としてどのように立ち振る舞うのか,我々日本人がどのように活躍していくことができるのか,教員として何ができるのか,しっかりと考え,行動していきたいです.


(1)厚生労働省職業安定局,我が国の構造問題・雇用慣行等について,平成30年.

(3)採用と大学教育の未来に関する産学協議会・報告書,Society 5.0に向けた大学教育と採用に関する考え方,経団連.

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