top of page

廃用症候群から考える“体を動かす”ことの重要性

 廃用症候群という言葉を知っていますか?廃用症候群とは過度に安静にすることや,活動性が低下することによる身体に生じる様々な症状のことを言います(1).

例えば,入院等でベッドに長期で安静にする(寝た状態が続く)ことも原因の一つとされています.具体的な症状としては,以下のようなものがあります.


・筋委縮:筋肉がやせ衰える.

・関節拘縮:関節の動きが衰える.

・骨委縮:骨がもろくなる.


 例を挙げると,絶対安静の状態で筋肉の伸び縮みが行われないと1週間で10~15%の筋力低下が起こるとされています.高齢者の場合だと,2週間で下肢(足)の筋肉が2割も委縮するとされています.その他の症状には,心肺機能の低下やうつ,せん妄(軽度の意識混濁),誤嚥性肺炎,起立性低血圧,褥瘡(床ずれ)などの症状がおこるとされています.

 運動を行わないことにより筋肉の萎縮や,関節拘縮が起こることはまだ理解しやすいかと思いますが,うつやせん妄など精神的にも悪影響となることをご存じでしたでしょうか.

 これらの症状は決して他人ごとではなく,実際に廃用症候群になってしまうと,元の状態まで改善させることは難しくなり,最悪の場合入院が原因で寝たきりとなることもあり得ます.治療のために病院に行き,入院したにも関わらず,入院が原因で寝たきりになってしまっては元も子もありません.

 そのため最近では,できるだけ寝た状態を存続させないように,座る姿勢を増やしたり,ベッド上で上肢や下肢を動かす運動を行うといったこともされているようです.何年か前の医学系学会に参加した際も,ある先生が廃用症候群に対して「現在行われている医学的リハビリテーションは質も量も十分提供できているのか.脳卒中や骨折以外にも長期臥床(長期間の絶対安静)を強いられる状態は少なくない.侵襲の大きい治療(手術など)を行う場合は必ずリハビリテーション医療を提供するシステムを作らないと病院で寝たきり患者が大量につくられることになる」と警告されていました.“体を動かす”ということは身体的にも精神的にも重要であるといえるのではないでしょうか.

 日に日に技術が進歩し,ロボットやIoT家電があふれる世の中になってきましたが,生活をロボットで楽にしすぎるというのも,考えていく必要があるのかもしれません.長期的なQOL(生活の質)を維持するためにも日々の運動を心がける必要があります.

 医学も工学も日々進歩しています.そのため,これまで常識とされていたことも変更される可能性もあります.今は自身で様々なことを調べることができる時代です.気になることがあれば積極的に調べてみるのもよいかもしれません.


(1)健康長寿ネット,https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/rounensei/haiyo-shokogun.html

最新記事

すべて表示

助教とは

皆さんは助手と助教,助教授の違いを明確に答えられますか?

IROS2023に参加して

先日アメリカで開催された国際会議,IEEE/RSJ International Conference on Intelligent Robots and Systems(IROS)に参加してきました.IROSはICRAなどと並びロボティクス分野で権威のあるトップカンファレンスの一つです.今回は私の発表ということもあり,一人で参加してきましたが,今年度は多くの学生たちが自身の研究を海外で開催される国

bottom of page