前回のコラムで,学科選択は将来のキャリア選択においても重要となることを述べましたが,具体的に学科によって何が違うのでしょうか.
例えば,あなたがロボット関連,もしくはAI(人工知能)関連に興味があったとします.工学部まで選択することができたあなたは,学科の選択で迷うのではないでしょうか.
今回も明治大学を例に挙げますが,ロボット・AI関連でパッと頭に思い描く学科は「機械工学科」でしょうか.似たような学科に「機械情報工学科」もあります.あとは我々の所属する「電気電子生命学科」や,「情報科学科」,「物理学科」なども選択肢に挙げられそうです.
もう少し詳しく見ていきましょう.大学のHPではそれぞれの学科の授業科目(1)を見ることができます.ロボット・AI関連について学ぶことができそうな授業科目は,例えば「機械工学科」では「メカトロニクス」,「ロボット機構学」,「制御工学」などの授業科目があります.「情報科学科」にも「知能ロボット学」,「情報理論と機械学習」などがありますし,「電気電子生命学科」にも「システム制御」,「情報理論」,「電子回路」などがあります.学科によってコアとなる部分は異なるため,それぞれの学科が専門とする授業科目が割合としては多くなりますが,例えばロボット・AI関連を学ぶためにはこの学科でないとダメということではないようです.
次に,前回のコラム(学科はどのようにして決めるか1)でも書きましたが,研究室での研究活動も将来のキャリア選択において重要な選択となります.では,例えばロボット・AI関連を専門とする研究室はどの学科にあるのでしょうか.
それぞれの学科HPの中に専任教員一覧ページ(2)があり,それぞれの学科に所属する教員が研究室でどのようなことを研究しているのかを見ることができます.
「機械工学科」では「ロボット工学研究室」や「機械制御システム研究室」があり,「機械情報工学科」には,「システム制御研究室」や「マニピュレーション研究室」などがあります.我々「電気電子生命学科」にも私の研究室である「スマートメカトロニクス研究室」や「ネットワークシステム制御研究室」があります.「情報科学科」にも「知能ロボットシステム研究室」があります.研究室の観点から見ても,ロボット・AI関連を学ぶためにはこの学科でないといけないということでもないようです.
では,「学科をどのようにして決めるか」という私なりの答えですが,私は正直「研究室」で決めてほしいと思っています.もちろん学科によって学ぶ内容は少しずつ異なり,全体の授業科目において学科のコアとなる授業科目の割合が増えます.(例えば電気電子学科の場合は,電気回路や電磁気学,機械学科の場合は材料力学,熱力学,流体力学,機械力学など,学科によって専門とする内容は異なりますし,実験科目の内容も学科によって大きく異なります.)
しかしながら,就職先が学科によってそこまで異なるかというとそうでもありません.(例えば本学の場合,製造業への就職[38.1%(電気電子生命学科),55.3%(機械工学科),33.3%(機械情報工学科)]であり,情報通信業への就職割合は[37.1%(電気電子生命学科),6.4%(機械工学科),29.6%(機械情報工学科)]となっています(3).多くの大学のHPから就職先情報は確認できますので,確認してみてもよいかもしれません.
ちなみに製造業とは,「モノを作り出し,販売する産業」であり,情報通信業とは「情報,インターネットのサービス等を行う産業」です.理工学部に入る多くの学生さんは,これらの企業でエンジニアとして働いています.
個人的には,それよりも研究室の選択が重要であると考えています.それほど研究室で行う研究活動は将来において重要な個としての財産となりますし,就職活動の際には,多くの場合自身の行ってきた研究について問われます.
学科によって学べる(自分の強みとなる)専門性が異なるという大前提があったうえで,ぜひ高校生のうちにいろいろな研究室のHPをのぞいてみることをおすすめします.
「大学,学部,学科,(大学3年生のタイミングで)研究室」という順番で志望先を選ぶのももちろんよいかと思いますが,私は「(高校生のタイミングで)研究室,学科,学部,大学」という順番で大学を選ぶ,つまり,この研究室に行きたいから,この学科,学部,大学を志望するというのも選択肢の一つとして考えてみるのもよいかと思います.
(1)https://www.meiji.ac.jp/koho/syllabus/index.html
(2)https://www.meiji.ac.jp/sst/teacherlist/index.html
(3)https://www.meiji.ac.jp/shushoku/date.html
「大学入学から就職までの流れ」や「学びたいことと入学後のギャップを感じた時の行動」などの高校生,大学生向けのコラムを「理系キャリアとモノづくり産業特化の研究・学習サイト MONOWEB」にて記載していますので,興味のある方はそちらもご確認ください.
MONOWEBサイト:https://mono-web.jp/