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日本の未来のために私ができること

 ここ数年の時代変化は目まぐるしく,新型コロナウイルスの蔓延から,国家間の戦争,ChatGPTなどの生成AIの出現,最近ではバブル期を彷彿とさせる株価上昇など,皆さんも時代の流れや変化を肌で感じ取っているのではないでしょうか.私も書籍やメディア,ネット等の様々な媒体を通して,世界の流れに遅れを取らないよう毎日必死に情報を追っています.日本では賃金格差が日に日に顕著になり,これまでのように朝から晩まで必死に働いていることが本当に正しいのか,Youtuberや会社経営者が成功しているのをネットで見て,このままの人生でよいのかと悩む方も多くなっているのではないでしょうか.実質賃金が下がり続ける一方で,税金は増加していく,政治家は正しく税金を使った国造りをしているのか,メディアが報道していることが本当に正しいのか,コロナワクチンは本当に有効だったのか,最近の世の中に疑問が湧いているのは私だけではないはずです.

 私は自身の知識のなさ,無知さを痛感し,出張時の移動中などを利用して本を読むようになりました.最初は世界経済について勉強しようと思い読み始めた本ですが,その後,人類や国,戦争の歴史,感染症や癌,鬱などの医学,量子力学や宇宙物理学など様々な分野の本を読むようになり,気づけばこの数年で200冊ほど読んでいました.

 本を読む中で得た一つの結論は,情報(知識)は力であることと,一つの媒体で情報(知識)は決定してはいけないことです.まず,情報(知識)は力についてですが,私はこれまであまり情報を進んで拾う努力を行ってきませんでした.自身の興味のある分野はとことん究める努力をするのですが,一方で知らないことはとことん知らない人間でした.そのため,特定の話では,自身の意見を述べることができますが,知らない分野(興味のない分野)では,全く話ができませんでした.本を読むようになり,少しずつ知識が増えたことで,物事を多角的にとらえることができるようになってきたと感じています.私は仕事柄,様々な専門分野を持つ研究者や全く専門の異なる企業の方々と話す機会も多いのですが,そういった機会でも,積極的に話すことができるようになりました.この情報(知識)は何も仕事だけで活きるものではありません.様々な本を読み知識を付けたことで,日常生活における様々な選択も変わってきました.

 周りの目を気にしすぎて,周りに流され,自身の意見を持つことができなくならないように,その選択をすることで自身や身近な人が後悔しないように,しっかりと情報(知識)を身につける必要があります.ただし,書籍が絶対というわけでもありません.当たり前ですが,本には著者がいます.著者の意見が詰まったものが本です.逆にそれはテレビや新聞にも同じことが言えます.そのため,書籍は書籍,テレビはテレビ,ネットはネットと,様々な媒体から得られる情報を吟味し,自身の考えをまとめ,自分自身としての意見を持つ.これを様々な物事に対して行う努力をする.最近私が気を付けていることです.

 世界情勢が日に日に不安定になる中,日本の株価はなぜか上昇し続けています.政府が投資を勧めたことが要因の一つかもしれませんが,日本人の多くは海外に投資しています.ではなぜ日本の株価が上昇しているかというと,海外の人たちが日本の企業に投資をしているからです.海外の人たちは,よく世界を観察しています.円安の影響もあるかもしれませんが,日本が本来持つポテンシャルの高さが改めて評価されているのだと私は思っています.

 今後,日本はどうなっていくのか.この問いも非常に重要なテーマです.グローバルな世の中になり,日本もその渦中に巻き込まれています.終身雇用が日本の特徴でしたが,政府も含めリスキリングやジョブ型雇用など,グローバルな考えが日本にも広まり,もはや終身雇用は昔の考えとなってしまいました.技術の継承を強みとしたモノづくりが得意な日本においては非常に苦しい状況です.そのような背景もあり,政府はリスキリングを勧め,AIやプログラミング,時代の流れに沿った技術の再習得を促しています.雇用も大きく変化しています.これまでの終身雇用からジョブ型雇用に切り替わり,就職がゴールではなくなってきました.企業は企業努力だけでは世界の流れに勝てません.時代の変化を先読みし,世界の流れに合わせて変化しないとたちまち潰されてしまいます.日本を支える車産業も欧米諸国のカーボンニュートラルの方向性次第では今後どうなるかわかりません.日本では,全就業者の内1割が自動車産業に携わっています.グローバルな世界において,日本としてどのようにふるまうべきか,私も含め皆が真剣に考えなければいけません.

 本コラムのタイトルである「日本の未来のために私ができること」ですが,実はまだこの問いに対する明確な答えは見つかっていません.ただ,やりたいことはあります.それは,未来を担う若者たちに私の知識や情報,考え方を伝えることです.私は大学教員です.大学教員として,学生さんたちに専門分野を教授する立場にあります.私の“いわゆる”専門分野は人間工学やメカトロニクスですが,私の強みは横断的な研究力です.様々な角度から社会的課題を洗い出し,専門性にとらわれることなくその答えを導く.何も人間工学やメカトロニクスが答えでなくてもよいのです.そのため,様々な研究者たちと議論し,様々な展示会や学会に参加し,展示会では実際にロボットや製品を体験してもらう.そうすることで,自身の抱えるテーマの本当の解決策を見つけることができると私は考えています.よく専門分野は何かと聞かれますが,私は専門分野という言葉は好きではありません.専門分野を決めてしまうと,その分野しか研究してはいけないように感じてしまいますし,例えば,その専門分野がこれ以上発展しなくなった場合,その研究者は必要なくなってしまいます.(例えばAIと高機能PCの発展により,理論数学者や数値解析シミュレーションを中心とした理工系の研究分野は今後収束していくと予想されています.)もちろん,私の考えを強要するつもりは甚だありません.ただ,一つの意見として,一つの研究方法として,考え方の一つとして,伝えていけたらと思っています.これが,今私が考える日本の未来のために私ができることです.

 今,世界は明らかにマイナスの方向へ進んでいます.技術の進歩やグローバリズムの影響もあり,様々な要素が複雑に絡み合いながら時代は進んでいくことになります. 私が一番心配なのは,今の学生や子供世代です.バブル期を経験した60代,70代が今の経営層であり,政治を動かしていますが,本当にその舵取りで大丈夫でしょうか.今の日本の方向性,企業の方向性,教育機関の方向性で本当に明るい未来は築けるでしょうか.時代は刻々と変化する中で,昔と同じ考え方で本当によいのでしょうか.今のままで,この先大人になる子供たちは安心して将来に希望を抱くことができるでしょうか. 私は,到底そうは思えません.これからを担う子供たちのためにも,大学教員である私ができる「学生のための研究教育」,この点を中心にまずは活動していきたいと思います.

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